明治一分銀について

 御存知の方も多いと思いますが、昔はとても高価で、なかなか手の届かない貨幣でした。特に、Kh(跳分跳銀・川常交叉)は天保一分銀のSm(跳分・長柱座)よりも高価でした。今ではかなりこなれた価格になっているので、明治一分銀自体、収集しやすい分野になったとも言えます。

 ただ、難しいのは太政官貨幣司(東京と大阪長堀)で製造された本座の明治一分銀をどの一分銀だと考えるか、だと思います。逆桜が明治の位置にある一分銀は多種多様ですが、そのほとんどは別座です。私は明治一分銀については詳しくはありませんが、平成10年に発表された丹野昌弘氏の開封報告(太政官貨幣局の25両包みの開封結果報告)や浅井晉吾氏の『新・一分銀分類譜』の書体などを参考にすれば、ある程度はその姿が見えてくると思います。

 見解の相違はあるでしょうが、私は、表はH(半欠金・長柱銀)、J(ス山縦横点・先太く銀)、K(跳分跳銀・短柱銀)、M(跳分・短柱銀)の4種類×裏はb(へ山向点X銀)、h(川常交叉)、j(半川常く銀)の3種類=12種類と表B(ス山斜横点X銀)×裏h(川常交叉)=1種類、合計13種類が明治一分銀の本座だと思っています。逆桜は同じで、書体が似ていても、別座はやっぱり字が"きたない"し"下手"なんですね。バランスが悪いし、美しくないんですよ。ところが、やっぱり本座は書体が"美しい"し、コイン全体のバランスがいいんですね。

 私が一番気になるのが、『新・一分銀分類譜』で言うところの裏h-2(右短川常交叉)です。字が下手だし、バランスも悪い。実物を見ても、品位も悪そうです。例えば、"是"の最終画の曲線美が全然違います。裏h-1(川常交叉)の最終画は美しい曲線ですが、裏h-2(右短川常交叉)の最終画はアンバランスな曲線です。一目瞭然で、言うまでもなく、前者が本座、後者は別座、です。でも、オークションで同等に扱われ、どちらにも同じ鑑定書が発行されている、のをよく目にします。PCGSがわからないのは当然としても、日本の鑑定書やオークションで同じ扱いにしてはいけないと思います。価格のことを言っているのではありません。カテゴリーの問題なんです。