天保一分銀 表P型 (その2)

 御存知のように、天保一分銀の表の型には、逆桜の無いZ型とP型~T型までの合計6種類が存在します。もちろん、本座(幕府の銀座鋳)ではない別座(藩鋳)にはN型やO型も存在しますが、ここで言う天保一分銀とは本座のことです。今回は天保一分銀 表P型についてお話します。

 P型は天保一分銀の中では存在数が一番多く、私の実感では半分くらいがP型です。P型は大きく2種類に分かれます。一つは「人銀」、もう一つは「く銀」です。書体を比べてみると、「人銀」の方が柔らかくて古風(つまり前期)、「く銀」の方が直線的で機械的(つまり後期)、という印象を受けます。もちろん、「人銀」と「く銀」の中間的なものも存在します。実際、天保一分銀の未使用品を長年探していると、その2/3くらいがP型で、その中でも圧倒的に「く銀」が多いことを考えると、P型の「く銀」が天保一分銀製造の後期のものだと考えることが可能です。

 表P型の裏はn型~t型までの合計7種類が存在します。存在数の多い順に並べると、一番多いものがPt、次にPqとPo、少しの差でPrとPs、と続きます。ほとんどの手引書で同ランクとされているPpは実際にはかなり少なく感じます。一番少ないのはPnです。Pnはかなり少ないのですが、書体が地味なので人気がなく、あまり評価されていません。

 裏n、o、pの表Pは「人銀」が多く、裏qの表Pは「人銀」と「く銀」が同じくらい、裏r、s、tの表Pは「く銀」が多い、ように感じられます。また、Pnには額縁か額縁様が多く存在することから、比較的前期に丁寧に製作された印象を受けます。この結果は最初に述べた「人銀」の書体が古風で、比較的前期に製作されたものではないか、という考えと一致します。

 表P型の希少性を価格で表現すれば、Ptを2000円とすると、PqとPoが2100円、PrとPsが2300円、Ppが3000円、Pnが9000円、という感じではないでしょうか。

 次回は表S型について書きます。是非御覧下さい。