天保一分銀 表Q型  (その5)

 天保一分銀の表Q型は、有名な『切れ分』または『離れ分』と呼ばれるもので、"分"の第一画と第二画が離れているものです。表Q型の裏はl、m、r、s の4種類しかなく、天保一分銀の中では一番組み合わせが少ない型です。Q型には"大字"と"小字"があります。"分銀"の文字の大きさが違うのですが、一番大きな違いは"銀"字の最終画です。"大字"は右方向への"はらい"がしっかりしていますが、"小字"は"はらい"が無く、どちらかと言えば"草尾銀"になっていることです。さらに"大字"は全体的に"太字"が多いのですが、"小字"は"細字"です。"大字"と"小字"の存在比率は3:1くらいではないでしょうか。

 Q型は基本的に希少な型ですが、その中でも圧倒的な比率を占めるのがQlです。仮に表Q型が100枚あるとすれば、Qlが91枚、Qmが4枚、Qsが3枚、Qrが2枚、という感じでしょうか。よく比較されるQlとSlですが、Qlの方がやや少なく感じます。昔はQlの方が評価が高かったのですが、今はSlの方が明らかに人気があります。やっぱり跳ね物は強いです。現在は、Slが5000円だとすると、Qlは3500円~4000円というところでしょうか。

 Qlに次いで存在数が多いのがQm(長柱座)だと思います。Qmより少し少ないのがQsです。多くの手引書はQmをQsより1ランク上にしていますが、私はせいぜい同ランク、Qsの方が1ランク上だと思っています。ただ、価格的にはほぼ同じくらいで、40000円~45000円(約Qlの10倍)というところでしょうか。Qmにはそこそこ状態の良いものが存在しますが、Qsの未使用品は滅多に見ることはできません。

 Q型最高の珍品はQrで、Qsより明らかに1ランク上、Qmより2ランク上、というのが私の見解です。状態の良いものは稀有で、素晴らしい未使用品を私は見たことがありません。50000円~60000円くらいだと思います。