初心者向け 文政南鐐二朱銀の真贋 (1)

 文政南鐐二朱銀は古金銀の中でも偽物が多い古銭です。偽物といっても、コレクターを騙そうとする現代物の偽物は少なく、流通を目的とした当時の偽物が中心です。先日もヤフオクでまとまった数の文政南鐐二朱銀が出品され、それなりの価格で落札されましたが、大部分が偽物でした。一見本物に見える当時の偽物でしたので、出品者も落札者も偽物とは気づいておられなかったかもしれません。もしかすると、出品者はわかっておられたかもしれませんが、落札価格からすると落札者は本物として落札されたようです。

 偽物を買わないために初心者がすべきことは何か?それは、本物の"約束事"をしっかり覚えることです。本物の"約束事"とは何か?

 それは、諸先輩方が見つけて下さった本物と言われている古銭が持つ"共通の特徴"です。もちろん、いつの世にも新発見はありますから、今までの"約束事"に合わない本物が存在する可能性は0ではありませんが、やっぱり"約束事"に合わない古銭はほぼ偽物と考えてよいのではないでしょうか。

 それでは本物の文政南鐐二朱銀の"約束事"を確認していきたいと思います。まずは量目です。文政南鐐二朱銀の規定量目は2.0匁ですので、約7.5gが基準となります。本物であれば、量目は約7.3g~7.7gくらいの間には収まるはずです。この数値から少し逸脱(特に軽い方へ)すれば疑いの目を持つべきで、大きく逸脱すればそれだけで偽物と判断していいと思います。6g台であれば、それだけで偽物だと断定できます。量目は真贋の重要なfactorですが、一部本物でも火中品などには量目の軽いものもあります。

 次は面(表)の書体の"約束事"を見てみましょう。文政南鐐二朱銀の面(表)には『以南鐐八片/換小判一両』という10文字が打刻されています。ここでまず知っておかねばならない"約束事"は『南』と『判』の漢字の書き順です。漢字を書く場合、本来、書き順の遅い方が"上"に書かれるはずです。ところが、『南』と『判』の2字は、第4画の方が第5画の上に書かれています。これが銀座のシークレットで、この"約束事"に反するものは、それだけで偽物と断定できます。

 さらに、『片』の字を見てみましょう。第1画に第3画と第4画が両方とも接触しているものが"両とじ片"、第3画が離れて第4画が接触しているものが"上あき片"、第3画が接触していて第4画が離れているものが"下あき片"です。ところが、第3画と第4画が両方とも離れている"両あき片"は存在しません。もし"片"の字を見て、第1画から第3画と第4画の両方が離れている文政南鐐二朱銀があれば、それだけで偽物だとわかります。

 "両とじ片"ならば、『南』の字は第3画と第4画が離れる"あき南"でなければならず、第3画と第4画が接触する"とじ南"であれば偽物です。"上あき片"は"あき南"と"とじ南"の両方が存在しますが、"下あき片"は必ず"とじ南"になっています。(続く)

 

  

 

 

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コメント: 2
  • #1

    一分銀の山本 (土曜日, 25 1月 2025 10:14)

    明日香様こんにちは
    手持ちの文政南鐐二朱銀をチェックしてみました。
    そのなかの一枚、贋作決定です。
    南の上下は書き順通り、片は両空き、決定的なのは量目6.55gでした。収集を始めた頃の購入品でなにか違和感があったのですが贋作の特徴が全部当てはまりました。
    今後の戒めのために、とっておきます。

  • #2

    明日香津五(店主) (土曜日, 25 1月 2025 13:34)

    一分銀の山本様、コメントありがとうございました。是非、次回もお読み下さい。いつもありがとうございます。