私は長年古金銀、特に一分銀や二朱銀などの銀の角物を中心に収集・販売してきました。私が好きな古銭のトップ3は、天保(安政・明治)一分銀・文政南鐐二朱銀・文政南鐐一朱銀、ということに変わりはないのですが、最近幕末の地方貨幣にはまっています。地方貨幣には希少で高価な銀貨も多いのですが、それらは経済的に無理なので、比較的廉価な大型の銅貨と鉛貨を勉強しています。ある古銭会で知り合った人から秋田鍔銭の中尾、それも未使用品を譲り受けたことがきっかけでした。阿仁銅山独特の赤褐色が見事に残っている逸品で、その魅力に一気に引きずり込まれたわけです。
さて、今回入手し大変気に入っている一品は、秋田波銭、です。秋田鍔銭と同様秋田久保田藩で幕末(文久年間)に鋳造された貨幣です。秋田鍔銭と同様、秋田波銭は額面や量目に関する文字が全く無い珍しい貨幣です。全体が鑢がけになっていて、表には"波"、裏には"秋"の刻印があるだけの極めてシンプルな貨幣です。"波"の種類で、"太波"と"細波"に分類されますが、中間的なものもあるようです。これは"太波"で、極めて状態の良い一品です。状態の悪いものはよく見かけますが、これほど"波"が深く、綺麗に残っていて、真円に近いものは見たことがありませんでした。秋田波銭としてはかなり高価でしたが、買ってしまいました。量目は約37g、径は約42.5㎜です。
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