古金銀を収集する人にとって、両替刻印の問題は避けては通れない重要課題です。御存知のように、両替刻印とは、江戸時代の両替商が自分が鑑定した小判金や一分金などに"鑑定済み"(本物)の証として小さな刻印を押しました。その貨幣がまた自分の所に回ってきても、自分の押した刻印があれば再鑑定する手間が省けるからです。現在、造幣局が製造した貨幣に同じようなことをすれば、「貨幣損傷等取締法」違反となり処罰の対象になってしまいますので、貨幣に穴をあけたり、鋳つぶしたりすることはできません。
さて、この両替刻印、古金銀を収集する上でどのように扱うか、は人それぞれかもしれまん。私の知り合いでも、一分銀に両替刻印が打ってあるものばかりを集めておられる方もおられます。考え方は人それぞれですから正解はありませんが、私はやっぱり「傷」である、と考えています。今回は、私の基準をお話ししたいと思います。
①小判金・一分判金
慶長・元禄・宝永・正徳・享保・元文までは、両替刻印があるものが"標準評価"で、無刻印は"+評価"です。両替刻印があるものが標準と言っても、多くの両替刻印が打たれているものや打たれている場所によっては"-評価"になるのは言うまでもありません。文政・天保・安政・万延は無刻印が"標準評価"で、両替刻印があるものは"-評価"となります。例えば、両替刻印のある天保小判金(組鑑付き)が販売されているとします。両替刻印があっても、貨幣商協同組合の貨幣鑑定書の特徴欄には何も書かれません。特徴欄には、加工や磨き、ヒビや歪み、火中品など、その貨幣の評価にとってマイナスになることが記載されることがあるのですが、組合は両替刻印を特徴欄に記載する"傷"や欠点とは見なしていない、ということになります。
②一分銀・二朱銀・一朱銀
明和/寛政南鐐二朱銀でも無刻印が"標準評価"で、両替刻印があるものは"-評価"です。注意しなければならないのは、古南鐐二朱銀などはやや大型なので、側面に両替刻印が打たれているものもあります。側面に綺麗に打たれているとあまり気にはなりませんが、"-評価"であることは変わりません。文政南鐐二朱銀・文政南鐐一朱銀・天保一分銀・安政一分銀・安政二朱銀・嘉永/安政一朱銀・明治一分銀・明治一朱銀も無刻印が"標準評"で、両替刻印が打たれているものは"-評価"です。
③一朱金・二朱金
元禄二朱金は微妙ですが、形が小さいので両替刻印が打たれていると全体が崩れます。ですから、私の中では無刻印が"標準評価"で、両替刻印があるものは"-評価"となります。文政真文二分金・文政草文二分金・文政一朱金・天保二朱金・安政二分金・万延二分金・万延二朱金・明治二分金も無刻印が"標準評価"で、両替刻印が打たれているものは"-評価"です。
④丁銀
丁銀はもっとも両替刻印が打たれている確率が高い貨幣です。こればかりは、慶長~安政まで、両替刻印があるものが"標準評価"で、無刻印は"+評"です。長期間流通した元文丁銀の中には、数えきれないほどの両替刻印が打たれたものがありますが、これはやっぱり-評価だと思います。以前、ほとんど流通していない天保丁銀を入手したことがありました。素晴らしい光沢とうぶ感のある丁銀でした。状態は未使用品としかったのですが、両替刻印が1つありましたので準未使用品としたことがあります。両替刻印が無ければ未使用品と表示していたと思いますが、両替刻印にはそれだけの"重さ"がありました。
コメントをお書きください