天保二朱金は天保3年(1832年)に発行された金貨で、万延元年(1860年)までの約28年間で12883700両(約1億枚)製造されました。この金貨、名前は"天保二朱金"と言いますが、評判の悪かった文政一朱金の後継貨幣として発行されました。量目は0.4375匁(約1.6g)で、文政小判金の8分の1になるように設定されています。但し、文政小判金の金品位は約56%、天保二朱金の金品位は約29%ですから、幕府はかなりの出目を得たわけです。
さて、この天保二朱金、現存数も格段に多く、ちょっと前までは1枚3000円~3500円で手に入る江戸時代で最も安価な金貨(万延二朱金でも1枚4000円~5000円)でした。ところが金価格の高騰により、天保二朱金の価格も信じられないほど上昇しています。約1.6g×0.3=0.48gの金が含まれていることになります。金1gが23000円とすると、23000円×0.48=11040円の価値がある、という計算なのでしょう。現実には地金としてその価格では決して売れませんが、それが購買意欲を掻き立てていることは間違いありません。
ですから、さまざまなオークションで天保二朱金の売買が盛んです。単品だけではなく、10枚、20枚と、まとまった売り物も多いです。ここで注意しなければならないのが偽物です。近代銭のように、現代に作られたスーパーコピーはありませんが、江戸時代に流通していた当時の偽物には注意が必要です。十分な"味"が付いているので、ぱっと見は本物に見えるものも少なくありません。
量目は真贋の基本です。本物の天保二朱金の量目は約1.6gですから、この数値から大きく離れるものは偽物です。さらに、本物の天保二朱金には必ず守られている共通の特徴(約束事)があります。御存知の方も多いとは思いますが、ここで整理をしておきます。
天保二朱金の面(表)の上部には、"桐紋"とそれを囲む"扇"が打刻されています。その"扇"の形に着目し、天保二朱金を2種類に分類します。
① 扇枠の底辺が左右に伸びて突き出ているタイプ
② 扇枠下部の左右の縦線が底辺より下に突き出ているタイプ
天保二朱金にはこの2タイプしかなく、扇枠が一筆書きのように繋がっている(凹凸がない)ものは偽物です。但し、極印の摩耗などにより、凹凸が極めて小さく、一見一筆書きのように見えるものもありますから注意が必要です。さらに、①と②のタイプにはそれぞれ約束事が存在します。
①の場合 ➡ 扇枠内の桐紋・左側の蕾に至る"芯"が欠けています(左欠芯)。右側の蕾に至る"芯"はあります。
②の場合 ➡ 扇枠内の桐紋・右側の蕾に至る"芯"が欠けています(右欠芯)。左側の蕾に至る"芯"はあります。
この約束事は必ず守られていますから、これが当時の金座のシークレットと考えてよさそうです。一度、皆様の蔵品を確かめてみるのも楽しいかもしれません。

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石吉 (月曜日, 02 2月 2026 10:48)
ブログ拝見させていただいてます。
そこそこ文献を読むほうだと思っていますが、天保二朱金の判別の仕方にこのような基準があること知りませんでした。
何らかの本に書かれているのではなく、業界の方が知っているような情報なのでしょうか。
他の一分判金の真贋に見方についても、記事にしていただけますと大変参考になります。
明日香津五(店主) (月曜日, 02 2月 2026 15:16)
石吉様
当サイトを御覧いただき、誠にありがとうございます。
昔の『ボナンザ』や『収集』にこのような記事が掲載されたことがあるかどうかはっきりはわかりませんが、天保二朱金に関してはあまり公になっていないかもしれません。業者でも勉強されていない方は御存知ないと思います。ですから組合加盟店やそのオークションでも天保二朱金の偽物が平然と販売されているわけです。
すべての分金や分銀に金座・銀座のシークレットマークがあるわけではありませんが、参考になるものもありますので、機会があればまた御紹介致します。コメントありがとうございました。