明和五匁銀のシークレット

 私が好きな貨幣の一つに『明和五匁銀』があります。1765(明和2)年に発行された銀貨で、量目が明示された唯一の銀貨です。面には『文字』『銀五匁』という5文字が、背には『常是』という2文字があります。『文字』は「もじ」ではなく、「ぶんじ」と読みます。つまり、『文字』は当時流通していた元文銀と同じ銀品位(約46%)であることを示し、『銀五匁』は量目が5匁(約18.74g)であることを示しているわけです。

 幕府の狙いはこの五匁銀12枚を元文小判金1枚(つまり1両)と交換させ、本来秤量貨幣であった銀貨を計数貨幣化することだったと思われます。当時、金1両の公定レートは銀60匁ですから、この明和五匁銀12枚で元文小判金1枚と交換、というのが幕府の思惑でした。しかし、当時の実際のレートは、金1両=63匁~64匁でしたので、幕府の思惑は人々にとって大変迷惑な話だったわけです。加えて、両替商の利益の一部は、銀の量目を量り、金に交換する手間賃(交換手数料)だったわけで、量目が固定化・明示化されているこの五匁銀は両替商からも嫌われました。このように、世間から見放された五匁銀は、わずか361200枚を製造しただけでその役割を終えました。

 価格的に言えば、昔から明和五匁銀は安政二朱銀と同等、という感覚です。ただ、この明和五匁銀、最近はあまり人気が無く、安政二朱銀の方にやや分があるように思います。画像の五匁銀は、少し前、私があるネットオークションで入手したものです。鑑定書はありませんが、まずはしっかりした美品なので、オークションが始まった日にとりあえず80000円で入札しました。受付期間は2週間くらいあるし、こういう形式のオークションは最後の5分で価格が上がるのでまさかこの価格のままで落札するとは思ってもいませんでしたが、何とそのまま落札、少し驚きました。いくら人気が今一つと言っても、手数料込で110000円くらいにはなるかなぁ、と思っていたからです。もしかすると、この五匁銀についていたオークション側のコメント、「真贋不明品・返品不可」が幸いしたのかもしれません。確かに、明和五匁銀には偽物が多く、価格もそれなりなので、あまり知識のない方が敬遠されたのかも(?)しれません。もちろん、この明和五匁銀は量目、書体、全体のつくり、どれをとっても間違いのない真正品ですが、背の常是刻印に綺麗にシークレットマークが確認できます。背の「常是」を囲む縁取りの右上角に、鋳溜まりのような"小さな突起(三角形)"が確認できます。これが真正品につけられたシークレットマークです。これほど綺麗に確認できるものは意外と少ないです。

 もちろん、真正品でも状態によってはわかりにくいものもありますから、これだけが真贋の全て、ではありませんが、一つの目安にはなるかと思います。参考になさって下さい。